設計図面、加工ノウハウ、生産管理のデータ。中小の製造業が扱う情報には、競争力の源であり、管理のしかたによっては営業秘密として保護され得る重要なものが多くあります。在宅での設計作業や、外出先・別拠点からの生産状況の確認など、社外から社内システムへつなぐ場面は確実に増えています。

一方で、「外から使いたいから」と社内をむやみに公開したり、図面をUSBや私用クラウドで持ち出したりすると、情報の経路と置き場所が見えなくなります。この記事では、図面・技術情報を守りながら社外へ安全につなぐ考え方を、専門用語ぬきで整理します。

なお、本記事は事務・設計などIT系システムの社外利用を対象とします。工場の制御系(OT:PLC・生産設備など)は対象外で、別の設計・対策が必要です。

この記事でわかること

  • 製造業のテレワークで問題になりやすい点
  • 図面・技術情報(営業秘密)を守る考え方
  • リモートアクセスの確認ポイント

製造業のテレワークで問題になりやすい点

製造業のテレワークには、ものづくりならではの事情があります。

  • 図面・技術情報の持ち出し:退職者・取引先・派遣を通じて、外部へ流出するリスク
  • 専任担当がいない:情報システムの専任者を置きにくい中小・町工場が多い
  • 古いVPN機器の放置:社外接続のための機器の脆弱性・更新まで手が回らない
  • OTとITの混在:工場の制御系と事務系のネットワークが分かれていない場合がある

問題は、外から使うこと自体ではなく、図面・技術情報の経路と置き場所が管理しきれなくなることです。ランサムウェアの被害は、警察庁のランサムウェア統計でも、製造業を含む複数業種で報告されています。

図面・技術情報(営業秘密)を守る考え方

図面や加工ノウハウは、適切に管理してはじめて法的に守られる「営業秘密」になり得ます。

営業秘密としての管理:経済産業省「営業秘密管理指針」では、営業秘密として保護されるための要件のひとつに「秘密管理性」が挙げられています。これは、その情報を秘密として扱う意思が、アクセスの制限などの管理によって従業員にも分かる形になっていること、という考え方です。誰がどの情報にアクセスできるかを制御することは、この秘密管理性を支える一助になります。ただし、アクセス制限だけで十分とは限らず、秘密として管理していることが従業員に分かる表示・ルール・教育も合わせて必要です。

内部不正への備え:IPA「組織における内部不正防止ガイドライン」では、技術情報などの持ち出しに関し、雇用終了時の対策(アクセス権の停止・見直し)の重要性が示されています。退職予定者・取引先・派遣の権限を、利用中だけでなく終了後に確実に止める手順が要ります。

従業員や取引先の個人情報を扱う場合は、個人情報保護法(個人情報保護委員会のガイドライン)の安全管理措置もあわせて確認します。

OT(制御系)とIT(事務・設計系)は分けて考える

製造業のセキュリティでは、**工場の制御系(OT)**と、事務・設計系(IT)を分けて考えることが大切です。本記事で扱うリモートアクセスは、図面・生産管理などIT系システムの社外利用が対象です。PLCや生産設備などの制御系(OT)は、停止が生産に直結し、専用の設計・対策が必要なため、リモートアクセス製品で一律に扱うべきではありません。PLCや生産設備の遠隔操作、制御ネットワークへの接続は、本記事の対象外です。専門の制御システム対策として、別途検討してください。

図面・技術情報を守るリモートアクセスの確認ポイント

考え方を、リモートアクセスに絞って点検できる形にしました。

製造業テレワーク 確認ポイントできていない項目から着手
  • 社外からの接続を、安全な経路にしている(直接公開しない)
  • 共有IDをやめ、担当者ごとに認証している
  • 接続後に必要なサーバーだけに到達できる(社内全体を開放しない)
  • 図面・技術情報の保存先を決め、私用クラウド・USBの持ち出しにルールがある
  • 退職者・取引先・派遣のアクセスを止める手順がある
  • 取引先・協力会社に渡した図面や共有リンクの期限を管理している
  • 工場の制御系(OT)と事務・設計系(IT)のネットワークを分けている
  • 接続ログを確認し、バックアップも取得している
  • VPN機器の脆弱性対応・更新の担当を決めている

できていない項目から、一つずつ進めます。基本的なテレワーク対策の全体像はテレワークセキュリティの記事でも整理しています。

「人」「経路」「データ」で整理する

図面・技術情報を守る観点は、3つに分けると抜けが減ります。

観点確認すること関連
人(誰が入れるか)担当者ごとの認証、取引先・派遣の権限、退職時の停止権限管理の記事
経路(どうつなぐか)直接公開しない、接続後の到達範囲を絞る、VPN機器の更新SSL-VPNの脆弱性
データ(どこに置くか)図面の保存先、私用クラウド・USBの制限、バックアップ社内のルール

とくに製造業では、退職者・取引先による技術情報の持ち出しと、OT/ITの切り分けが見落とされがちです。

進め方

専任担当がいない会社では、一度にすべては難しいものです。優先順位をつけるなら、次の順が現実的です。

  1. 社外からの接続を安全な経路にし、担当者ごとに認証する
  2. 接続後の到達範囲を絞る(図面・生産管理システムや受発注・在庫・工程情報など必要な範囲だけ)
  3. 図面の保存先・持ち出しのルールと、退職・取引終了時の停止手順を決める

たとえばForceLinkは、事務所側のForceLink BOXを経由して、許可した利用者だけが指定した社内サーバーや業務PCへ接続するリモートアクセスの一例です。図面サーバーや生産管理システムなど、IT系の接続先を絞る用途を想定しており、PLCや生産設備などのOT接続は対象外です(製造業向けの説明)。なお、現時点で多要素認証(MFA)には未対応のため、MFAや二要素認証などを必須要件にする場合は別途ご確認ください。

まとめ:押さえるべき3点

  1. 製造業の図面・技術情報は営業秘密になり得る。アクセスの制御が「秘密管理性」を支える
  2. 退職者・取引先による持ち出しに備え、終了後の権限停止まで手順化する
  3. リモートアクセスはIT系の社外利用が対象。工場の制御系(OT)は分けて考える

自社に合った進め方は、業種別ページセキュリティのページを確認しつつ、あわせて料金ページFAQで確認してください。

参考・出典