会計事務所や法律事務所は、顧客の決算情報・申告情報や、事件に関わる機微な情報を日常的に扱います。強い守秘義務を負う一方で、在宅勤務や外出先からの業務も求められる。ここに、士業ならではの難しさがあります。

顧客情報を社外から扱う以上、「誰が・どこから・どの情報に」アクセスできるかを、きちんと管理する必要があります。この記事では、業界のルールや法令をふまえつつ、顧客情報を守るためのリモートアクセスの考え方を、専門用語ぬきで整理します。

なお、この記事では主に税理士事務所・法律事務所を想定します。公認会計士業務や監査法人の要件は、所属団体の規程や顧客との契約条件も別途ご確認ください。

この記事でわかること

  • 士業のテレワークで問題になりやすい点
  • 確認しておきたい業界ルールと法令
  • 顧客情報を守るリモートアクセスの確認ポイント

士業のテレワークで問題になりやすい点

士業のテレワークには、一般企業以上に注意したい事情があります。

  • 守秘義務と機微情報:顧客の財務・税務・法律問題など、漏れたときの影響が大きい
  • 少人数で専任担当がいない:情報システムの専任者を置きにくい
  • 私物端末・私用クラウドの利用:手元の端末や個人のクラウドに、つい顧客データを置いてしまう
  • 補助者・外部委託の存在:パート職員や外部委託先にも、データへのアクセスが発生する

問題は、テレワークそのものではなく、顧客情報の経路と置き場所が管理しきれなくなることです。

確認しておきたい業界ルールと法令

士業の守秘義務は、弁護士法・税理士法などにも根拠があります。情報管理は、その守秘義務を実際に守るための具体策、という位置づけです。業界ごとのルールと、共通の法令を確認しておきましょう。

弁護士(法律事務所):日本弁護士連合会「弁護士情報セキュリティ規程」が令和4年に制定され、2024年6月1日から施行されています。同規程では、弁護士が取扱情報の情報セキュリティを確保するための**「基本的な取扱方法」を定めることが求められています。法律事務所では、これを所属弁護士・事務職員・補助者も含めて運用できる共通ルール**に落とし込むことが、実務上重要です。

税理士(会計事務所):日本税理士会連合会「税理士事務所等の内部規律及び内部管理体制に関する指針」は、使用人等の監督義務を適切に履行するための内部規律・管理体制の整備を示しています。関連する情報管理チェックリストなどのモデルも、事務所内の点検に使いやすい材料です。

共通の法令:個人データを取り扱う場合は、個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」で示される安全管理措置や、従業者・委託先に対する必要かつ適切な監督も確認が必要です。法人顧客の機密情報についても、守秘義務や契約上の秘密保持にもとづき、同じように管理方針を決めておくべきです。補助者や外部委託先がいる事務所では、この監督の観点がとくに重要です。

顧客情報を守るリモートアクセスの確認ポイント

業界ルール・法令の考え方を、リモートアクセスに絞って点検できる形にしました。

士業テレワーク 確認ポイントできていない項目から着手
  • 社外からの接続を、安全な経路にしている(直接公開しない)
  • 共有IDをやめ、利用者ごとに認証している
  • MFAや二要素認証など、パスワードだけに依存しない本人確認の要否を整理している
  • 接続後に必要な範囲だけに到達できる(事務所全体を開放しない)
  • 私物端末・私用クラウドへの顧客データ保存にルールがある
  • データの持ち出し・保存場所を決めている
  • 補助者・外部委託先のアクセス権を必要な範囲に絞っている
  • 退職者・委託終了先のアカウントを止める手順がある
  • 接続ログを確認し、バックアップも取得している

できていない項目から、一つずつ進めます。基本的なテレワーク対策の全体像はテレワークセキュリティの記事でも整理しています。

「人」「経路」「データ」で整理する

顧客情報を守る観点は、3つに分けると抜けが減ります。

観点確認すること関連
人(誰が入れるか)利用者ごとの認証、補助者・委託先の権限、退職時の停止権限管理の記事
経路(どうつなぐか)直接公開しない、接続後の到達範囲を絞るセキュリティ
データ(どこに置くか)私物端末・私用クラウドの制限、保存場所、バックアップ事務所のルール

とくに士業では、補助者・外部委託先の権限管理と、データの置き場所が見落とされがちです。

小規模事務所での進め方

専任担当がいない小規模な事務所では、一度にすべては難しいものです。優先順位をつけるなら、次の順が現実的です。

  1. 社外からの接続を安全な経路にし、利用者ごとに認証する
  2. 接続後の到達範囲を絞る(顧客ごと・業務ごとに必要な範囲だけ)
  3. 私物端末・私用クラウドのルールと、退職者・委託先の停止手順を決める

たとえばForceLinkは、顧客ファイル・会計データ・事件記録などへの到達範囲を絞る考え方の一例で、利用者ごとに必要な宛先だけを許可し、接続後に事務所のネットワーク全体を開放しない設計です。一方で、ForceLinkは現時点で多要素認証(MFA)に未対応です。MFAや二要素認証を必須要件とする事務所では、単体で要件に合わない可能性があるため、構成を別途ご確認ください。業種別の例は業種別ページでも紹介しています。

まとめ:押さえるべき3点

  1. 士業は守秘義務と機微情報を抱えるため、顧客情報の経路と置き場所の管理が要
  2. 弁護士は日弁連の規程、税理士は日税連の指針、共通して個人情報保護法の考え方を確認する
  3. リモートアクセスは、利用者ごとの認証・到達範囲の制限・データの置き場所から着手する

各事務所に合った進め方は、業種別ページセキュリティのページを確認しつつ、あわせて料金ページFAQで確認してください。

参考・出典