VPN機器を狙った不正アクセスやランサムウェアの被害が報じられるたびに、こんな疑問が浮かびます。

  • いまのVPN機器を、このまま使い続けてよいのか?
  • ゼロトラストやSASEのような大がかりな仕組みまで必要なのか?
  • 中小企業は、まず何から見直せばよいのか?

先に結論を言うと、「脱VPN」は、VPNそのものをやめることではありません。多くは「古い“境界型”の考え方を見直そう」という流れを指します。この記事では、専門用語ぬきで、実際に手を動かして点検できるところまで踏み込みます。

この記事でわかること

  • 自社VPNの「危ない構成」の見分け方(セルフチェック)
  • 脱VPNで本当に見直すべき設計のポイント
  • 中小企業向けリモートアクセスの、現実的な選び方

そもそも「脱VPN」とは何か

「脱VPN」は、特定の接続方式の名前ではありません。「社内ネットワークの中なら安全」という“境界型”の前提を見直す流れを、ざっくりそう呼んでいます。

ここで大事なのは、社外から社内へつなぐ仕組み自体は、これからも必要だということ。VPN・ZTNA・SASE は対立するものではなく、目的と規模に応じた選択肢です。問題は「VPNという技術」ではなく、狙われやすい古い設計・運用のほうにあります。用語の意味は用語集でも整理しています。

なぜ今、VPNのリスクが語られるのか

ランサム攻撃は、IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも組織向けの脅威の1位に挙げられています。古いVPNが狙われやすい理由は、大きく3つです。抽象論にならないよう、「危ない運用例」も添えます。

1. 装置がインターネットに露出している

社外から接続を受けるため、VPN機器をインターネット側に公開する構成が一般的です。公開されている以上、世界中から試行されます。警察庁「ランサムウェア被害防止対策」でも、VPN機器やリモートデスクトップのぜい弱性が悪用される事例が多数確認されていると説明されています。

  • 管理画面や接続口が常時インターネット側に出ている
  • ファーム更新・パッチ適用の担当が決まっていない

なお、脆弱性が放置されてしまう背景には、製品の販売・保守の経路上「修正情報が利用者まで届きにくい」「パッチ対応が保守契約に含まれていない」といった構造的な問題も指摘されています(JPCERT/CC)。「VPNだから危険」というより、脆弱性の放置や運用の不備が問題、という視点が大切です。

2. パスワードだけで入れてしまう

ID・パスワードだけで接続できる設定では、認証情報の漏えいや使い回しで、なりすまし侵入を許します。

  • 接続に共有IDを使っている
  • 退職者・委託先アカウントの棚卸しが遅れがち

3. 接続後に、社内LAN全体へ到達できてしまう

従来のVPNは「接続できれば社内LAN全体が見える」状態になりがちで、1台の侵害が横移動で広がります。

  • 接続後にファイルサーバー・業務PC・NAS・複合機の管理画面まで見える
  • 個人所有PCからの接続を許可している
従来のVPNは接続後に社内LAN全体へ到達でき横移動で被害が広がりやすいのに対し、ForceLinkは利用者ごとに許可した社内リソースだけへ接続を限定する比較図
接続後の到達範囲。従来のVPNは社内全体が見えがちだが、必要な宛先だけに絞れば1台侵害からの横移動の起点になりにくい。

各リスクへの設計上の考え方はセキュリティのページでくわしく解説しています。

自社VPNの危険度セルフチェック

まずは自社の状態を点検してみてください。

自社VPN 危険度セルフチェック3つ以上なら見直しの目安
  • 接続用の共有IDを使っている
  • 退職者・委託先アカウントの棚卸し頻度が決まっていない
  • 利用者ごとの接続先制限がなく、全員が同じ範囲へ接続できる
  • 接続後に NAS・複合機・業務PCの管理画面まで見える
  • 個人所有PCからの接続を許可している
  • VPN機器のパッチ適用・ファーム更新の担当が曖昧
  • 接続ログをふだん確認していない
  • 多要素認証(MFA)を使っていない
  • VPN機器が保守期限切れ、または更新が近い
  • 「誰が・どこまで入れるか」を即答できない

3つ以上当てはまる場合は、設定や運用の見直しを優先的に検討してください。技術の入れ替えより先に、運用と権限設計の見直しが効くことも多くあります。「ぜんぶ完璧に」ではなく、当てはまった項目から一つずつで大丈夫です。

当てはまる項目がありましたか?

「自社のVPNはどこを直すべきか」を、現在の構成をお聞きして具体的にご提案します。料金と条件はサイト上で確認できます。

中小企業が取りうる、現実的な選択肢

「脱VPN」と聞くと製品の乗り換えを思い浮かべがちですが、選択肢は4つあります。

選択肢初期負荷運用負荷利用者別の制御向く会社
既存VPNを設定・運用で見直す機器次第担当者がいて運用を整えられる
クラウド型 ZTNA / SASE を導入細かい複数拠点・複数SaaS・端末管理まで含めて統制したい企業
自社でリモートアクセス基盤を設計自由技術者がいて内製できる
中小向けの現代的なVPN構成に置き換え利用者・宛先単位専任情シスがいない中小企業

方式ごとの違いは比較ページでも整理しています。まずは「運用を整えるだけで十分か、置き換えが要るか」を切り分けるのがおすすめです。

脱VPNを「急ぐべき会社」と「急がなくてよい会社」

  • 急いだ方がよい:VPNの運用担当が実質不在/拠点外からのアクセスが増えた/全社一律の接続権限/機器の更新時期が近い
  • 急がなくてよい:利用者が少なく、権限分離・更新運用・ログ確認ができている/MFAや端末管理も整っている

「自社はどちらか」を判断するだけでも、対策の優先順位がはっきりします。

中小企業向けリモートアクセスの選び方

置き換えを検討するなら、次の基準で見ると失敗しにくくなります。

  • 初期費用だけでなく運用負荷で比べる(情シスがいない前提で誰が運用するか)
  • 利用者単位で到達先を絞れるか(最小権限。VPN接続後に社内全体が見える設計を避けたい)
  • 対応OSの範囲(Windows中心か、Mac/モバイルも必要か)
  • MFAの要否(必須なら対応状況を必ず確認)
  • 料金の分かりやすさ(最低利用期間・追加課金の有無。総額が事前に分かるか)

料金の考え方は料金ページも参考にしてください。

「VPNをやめる」必要はない。設計を見直せばいい

技術を丸ごと捨てなくても、次の4点を見直すだけでリスクはかなり下げられます。

  1. インターネットへの露出を減らす(管理画面をインターネット側に常時公開しない)
  2. パスワードだけに依存しない認証にする(端末ごとの鍵で接続を管理するなど)
  3. 接続後の到達範囲を絞る(社内LAN全体を開放しない)
  4. 会社ごと・利用者ごとに分離する

ForceLink は、この考え方を中小企業向けに実装した一例です。最新の暗号技術をベースに「現代的に設計し直したVPN」として、管理画面をインターネット側に常時公開しない設計・鍵ベース接続(端末ごとの鍵で接続を管理)・企業ごとの分離・社内リソース・ルート制御(VPN接続後も社内LAN全体を開放せず、利用者ごとに必要な宛先だけを許可する仕組み)を組み合わせています。

なお、多要素認証(MFA)を必須要件にする場合は、現時点では未対応のため、要件に合う構成を別途ご確認ください。「絶対安全」を約束するものではなく、守れる範囲とこれからのことは正直にお伝えしています。

正直にお伝えすると、向き・不向きがあります。

  • 向いている:Windows端末が中心/社内サーバー・NASへ“絞って”安全につなぎたい/専任情シスがいない/料金を読みやすくしたい(→ 業種別の例ユースケース
  • 向いていない:Mac・スマホが主端末/MFAが必須/すでに大規模SASEを運用中/公開事例や導入社数を重視して選定したい

まとめ:まず確認すべき3点

「脱VPN」をむずかしく考える前に、この3点だけ確認してみてください。

  1. VPN装置や管理画面が、外部に公開されていないか
  2. 接続後に、社内LAN全体へ到達できてしまわないか
  3. 利用者ごとに、必要なリソースだけ許可できるか

ここに不安があれば、技術の入れ替えより先に設計・運用の見直しが効きます。考え方の入口は中小企業のゼロトラスト入門、脅威への備えの全体像は中小企業のランサムウェア対策、実際に乗り換える際の段取りは移行チェックリストで整理しています。まずは現在の接続範囲や運用状況を整理し、比較ページで方式を、製品ページで具体的な仕組みを確認したうえで、あわせて料金ページFAQで確認してください。

参考・出典