「これからはゼロトラスト」「VPNをやめてSASEへ」。そんな流れの中で、中小企業でもSASEの検討が増えています。SASEは大きな企業のセキュリティを統合できる有力な考え方ですが、どの会社にとっても最適、というわけではありません。
この記事では、SASEを中小企業が導入する前に知っておきたいデメリット・注意点を、誇張せず整理します。あわせて「SASEが向くケース」も公平にお伝えします。SASEそのものを否定するのではなく、自社の規模と要件に合うかを見極めるための材料として読んでください。
この記事でわかること
- SASEのデメリット・注意点(中小企業の目線)
- それでもSASEが向くケース
- 中小企業の現実的な進め方
そもそもSASEとは(簡単に)
SASEは、ネットワーク機能とセキュリティ機能を、クラウド側で統合的に提供する考え方・サービス群です。ZTNA(利用者・端末・条件を見てリソース単位でアクセスを許可する考え方)などを含みます。
ここで誤解しやすいのが、「SASEにすればVPNが完全に不要になる」というイメージです。実際には、SASEやZTNAでも端末とサービスの間で暗号化通信やトンネル型の接続を使う場合があり、VPNと重なる部分もあります。VPNとの違いは「トンネルの有無」ではなく設計にある、という整理はVPNは危険って本当?の記事でも解説しています。
SASEのデメリット・注意点(中小企業目線)
1. 費用が大きくなりやすい
SASEは多機能なぶん、利用者数や通信量に応じた継続課金、オプション費用などで総額が膨らみやすい傾向があります。中小企業の規模では、使わない機能まで含めて費用を払う形になりがちです。
2. 導入設計と移行の負担がある
SASEは、製品を買えば完成するものではありません。SASEそのものではなく、SASEに含まれるZTNAやゼロトラストの考え方について、NIST(米国国立標準技術研究所)の「SP 800-207」は、ゼロトラストを単一製品ではなく、アクセス制御やポリシーを含むアーキテクチャとして整理しています。既存環境からの移行にも、相応の計画が必要です。
3. 運用の体制が必要
導入すれば自動的に安全・楽になるわけではありません。アクセスポリシーの管理やログの確認など、運用が続きます。デジタル庁「ゼロトラストアーキテクチャ適用方針」も、政府情報システムへの適用にあたり、現状把握や段階的な適用を重視しています。中小企業でも「導入して終わり」ではなく、段階的に進める考え方が参考になります。
4. クラウドサービスへの依存と、将来の乗り換えやすさ
通信やセキュリティの機能をクラウド側に集約するため、その提供サービスへの依存が高まります。また、複数機能を一つのサービス群に寄せるぶん、将来の乗り換えや構成変更がしにくくなる場合もあります(ベンダーロックイン)。海外事業者のサービスを使う場合は、データの所在(国内/海外)も確認しておくと安心です。
5. 通信経路が変わり、体感速度に影響する場合がある
通信をクラウド経由で処理する構成では、経路が変わります。業務システムや拠点の場所によっては、体感速度に影響する場合があります。
6. 既存環境との連携が必要になる
既存のID管理・端末管理・ネットワーク構成との連携や設計が必要になります。手元の環境とかみ合わないと、かえって運用が複雑になることもあります。
7. 小規模な用途には過剰になりがち
「少人数が社外から社内の特定サーバーやPCにつなぐ」程度の用途には、SASEは機能が過剰になりがちです。必要のない機能のために、費用と運用の負担を抱えることになります。
それでもSASEが向くケース
公平にお伝えすると、SASEが適している会社もあります。
| 向くケース | 理由 |
|---|---|
| 複数拠点・多数の利用者をまとめて統制したい | 拠点・端末・利用者のポリシーを一元管理しやすい |
| クラウドサービス(SaaS)の利用が多い | Webアクセスやクラウド利用の制御まで含めて設計しやすい |
| ID管理・端末管理・ログ監視の体制がある | SASEの機能を運用に乗せやすい |
| 外部委託先や海外拠点も含めて管理したい | 接続元や利用条件に応じた制御を設計しやすい |
これらに当てはまるなら、SASEは有力な選択肢です。
SASE導入前のチェック
検討する前に、次の点を確認してみてください。
- 多拠点・多数のSaaS・端末管理まで統合的に統制したい要件があるか
- 設計・運用を続けられる体制があるか
- 継続課金を含む総額を見積もり、納得できるか
- 既存環境からの移行計画を立てられるか
- 段階的に導入できる進め方になっているか
「いいえ」が多い場合は、いきなりSASEを目指すより、まず足元の対策から進めるほうが現実的です。
中小企業の現実的な進め方
IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」でも、まず基本的な対策を一つずつ整えることが勧められています。中小企業の現実解は、いきなり大規模なSASEを全面導入することではなく、必要な範囲から設計を現代化することです。
- 接続後の到達範囲を絞る(社内LAN全体を開放しない)
- 利用者ごとに必要な宛先だけを許可する(最小権限)
- 脆弱性対応・更新の担当を決める
こうした「ゼロトラストの考え方」のうち中小に効く部分は、大がかりなSASEでなくても取り入れられます。目的が「少人数の社外利用者に、社内の特定サーバーやPCだけへ接続させたい」という場合は、全面的なSASE導入以外の選択肢もあります。たとえばForceLinkは、利用者ごとに接続先を絞り、接続後に社内LAN全体を開放しないリモートアクセス製品の一例です。クラウド中継は国内のデータセンターで運用しています。ただし、現時点で多要素認証(MFA)には未対応です。方式ごとの違いはリモートアクセス方式比較の記事や比較ページでも整理しています。
まとめ:押さえるべき3点
- SASEは有力だが、中小企業には費用・設計・運用・オーバースペックの負担が出やすい
- SASEでもVPN的なトンネルを使うことがある。肝心なのは設計と運用
- 中小の現実解は「全面SASE」より、到達範囲を絞る・最小権限・更新から段階的に
自社にどこまで必要かは、リモートアクセス方式比較の記事で方式を、料金ページで費用の考え方を確認しつつ、あわせて料金ページとFAQで確認してください。