「VPN」とひとことで言っても、用途によって種類が分かれます。中小企業でよく出てくるのが、リモートアクセスVPNと拠点間VPNの2つです。名前は似ていますが、つなぐ対象も用途も違います。
「どちらを選べばいいの?」という問いには、実は用途で決まるというのが答えです。場合によっては、両方を使うこともあります。この記事では、2つの違いと選び方を、専門用語ぬきで整理します。
この記事でわかること
- リモートアクセスVPNと拠点間VPNの違い(比較表)
- 中小企業はどちらを選べばよいか(用途別の判断)
- どちらにも共通する注意点
リモートアクセスVPNとは
リモートアクセスVPNは、個人の端末が、社外から社内ネットワークや社内リソースへ、暗号化された経路で接続する方式です。在宅勤務や外出先から、社内のファイルサーバーや業務システムを使いたいときに利用します(対応する端末は製品によって異なります)。
総務省「テレワークセキュリティガイドライン(第5版)」でも、テレワークでは社外から社内へ安全に接続する経路の確保が前提とされています。リモートアクセスVPNは、まさにこの「人が社外から入る」場面のための仕組みです。利用者ごとにアカウントを発行して使うのが一般的です。
拠点間VPNとは
拠点間VPN(サイト・ツー・サイトVPN)は、拠点と拠点(本社と支社など)のネットワーク同士を、常時つなぎっぱなしにする仕組みです。各拠点のルーター・ファイアウォール・VPN機器などを使って、拠点同士のネットワークを結びます。拠点間ではIPsecなどの方式が使われることがありますが、この記事では方式名より、何をどこまでつなぐかを中心に整理します。
たとえば「本社と支社で同じファイルサーバーを共有する」「支社から本社の基幹システムを使う」といった、拠点をまたいだ常時接続が必要な場面で使います。利用者一人ひとりが接続操作をするのではなく、ネットワークそのものがつながっている点が特徴です。用語の整理は用語集でも行っています。
違いを一覧で整理
2つの違いを並べると、役割のちがいがはっきりします。
| 観点 | リモートアクセスVPN | 拠点間VPN |
|---|---|---|
| つなぐ対象 | 個人の端末 ↔ 社内 | 拠点 ↔ 拠点(ネットワーク同士) |
| 主な用途 | テレワーク・外出先からの利用 | 本社・支社などの常時接続 |
| 接続のしかた | 利用者が必要なときに接続 | 常時つながっている |
| 単位 | 利用者ごと | 拠点ごと |
| 機器 | 各端末にアプリ等 + 受け側 | 各拠点にVPN機器 |
| 向く場面 | 人が社外から入る | 拠点間で常時共有する |
3問で判断:どちらのVPNが必要か
選び方は、「何をつなぎたいか」で決まります。次の3問で当てはめてみてください。
| 質問 | 当てはまる場合 | 検討する方式 |
|---|---|---|
| 社員が自宅や外出先から社内へ接続するか | はい | リモートアクセスVPN |
| 本社と支社・店舗・工場を常時つなぎたいか | はい | 拠点間VPN |
| テレワークと複数拠点の常時接続が両方あるか | はい | 併用を検討 |
中小企業では、まずテレワーク需要からリモートアクセスVPNを検討するケースが多くなります。拠点が1か所なら拠点間VPNは不要なことが多く、逆に複数拠点で常時データ共有が中心なら拠点間VPNが軸になります。
併用する場合の例としては、本社と支社は拠点間VPNで常時接続し、在宅勤務者はリモートアクセスVPNで本社側のファイルサーバーや業務システムなど必要な接続先へつなぐ、という構成があります。具体的な利用イメージはユースケースでも紹介しています。
どちらにも共通する注意点
方式は違っても、「インターネットに機器を公開する」点は共通です。警察庁「ランサムウェア被害防止対策」でも、VPN機器やリモートデスクトップのぜい弱性が悪用される事例が多数確認されていると説明されています。どちらの方式でも、VPN機器の脆弱性対応・保守期限(EOL)の確認・ログ確認・接続後の到達範囲の制限は重要です。ただし、制限の単位が異なります。
リモートアクセスVPNで特に見ること
- 利用者ごとの認証(共有IDの回避)
- 退職者・委託先アカウントの停止
- 利用者ごとの接続先制限
拠点間VPNで特に見ること
- 拠点間で通す通信範囲(どの拠点から、どのサーバーへ通すか)
- 支社から本社LAN全体へ到達できない設計
- 不要なルート・許可ルールの削除と、拠点機器の更新・EOL管理
とくに拠点間VPNは「つながっていて当たり前」になりがちで、接続後にどこまで到達できるかが見落とされがちです。IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」でも、基本的な対策を一つずつ整えることが勧められています。セキュリティ設計の考え方はセキュリティのページでも解説しています。
たとえばForceLinkは、人が社外から社内リソースへつなぐリモートアクセス用途の一例で、利用者ごとに必要な宛先だけを許可します(社内LAN全体は開放しません)。本社と支社を常時つなぐ拠点間VPNを主目的とする場合は用途が異なるため、要件に合うかをご確認ください。なお、現時点で多要素認証(MFA)には未対応です。仕組みの詳細は製品ページで解説しています。
規模・業種別の選び方の例
自社の状況に当てはめると、選び方がはっきりします。
- 1拠点+在宅・外出が中心(小規模オフィス・士業など):まずはリモートアクセスVPN。多くの中小企業はここから始めます(→ 士業向けの例)。
- 複数拠点で同じシステムを常時共有(本社・支社・店舗):拠点間VPNが軸になります。ただし拠点間でも「支社から本社LAN全体に到達させない」設計が大切です。
- 多拠点+現場・在宅の両方(建設・不動産など):両方を併用するケースが多くなります(→ 建設・不動産向けの例)。
- すでに拠点間VPNがあるが、在宅から個別に使いたい:拠点間VPNはそのままに、リモートアクセスVPNを足すのが現実的です。
方式をもう少し広く比べたい場合は、リモートアクセス方式の比較もあわせてご覧ください。テレワーク全体の対策はテレワークのセキュリティ10項目で整理しています。
コスト・運用感の違い
ざっくりした傾向として、拠点間VPNは各拠点に機器を置くため初期の機器費がかかり、常時接続を保つ運用になります。リモートアクセスVPNは利用者単位で増減しやすく、在宅・外出の人数に合わせて使えます。どちらも、機器やソフトの更新・脆弱性対応という運用は欠かせません。料金の考え方はVPN料金相場の記事でも整理しています。
まとめ:押さえるべき3点
- リモートアクセスVPNは人が社外から入る、拠点間VPNは拠点同士を常時つなぐ仕組み
- 選び方は「何をつなぎたいか」で決まる。両方必要なこともある
- どちらでも、脆弱性対応・利用者ごとの認証・到達範囲の制限は欠かせない
自社にどちらが合うかは、比較ページで方式を、製品ページで仕組みを確認しつつ、あわせて料金ページとFAQで確認してください。